岩打つ波の朱雀院
あまた年 秋のこよひは 見しかども まだかばかりの
月はなかりけり
岩打つ波の朱雀院
(あまたどし あきのこよいは みしかども まだ
かばかりの つきはなかりけり)
意味・・多年秋の今夜の月は見て来たけれども、まだ
これほどの素晴らしい名月を見たことがなか
った。
作者名の「岩打つ波の朱雀院」は物語の登場
人物ですが「岩打つ波」に意味を持たせてい
ます。詞花和歌集の歌「風をいたみ岩打つ波
のおのれのみ砕けて物を思ふころかな」(意味
は下記参照)で、失恋していた作者が詠んだ歌
を意味しています。表歌は恋人が出来、好きな
人と見る月は素晴らしいものだ、という気持ち
です。
出典・・樋口芳麻宇呂著「王朝物語秀歌選」。
参考歌です。
風をいたみ 岩うつ波の をのれのみ くだけてものを
おもふころかな
源重之
意味・・風が激しいので、岩を打つ波が砕けるように、
自分だけが心を千々にくだいて物思いをする
この頃だ。
岩をつれなき女に、波をわが身にたとえてい
ます。
注・・いたみ=痛み。痛みを感じる、(風が)激しい
ので。
作者・・源重之=1000没、60余歳。陸奥守。36歌
仙の一人。
出典・・詞花和歌集・211。
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