鴨長明(かものちょうめい)


ながむれば 千々にもの思ふ 月にまた わが身ひとつの
峰の松風
              鴨長明(かものちょうめい)
                (新古今集・397)

(ながむれば ちぢにものおもう つきにまた わがみ
 ひとつのみねのまつかぜ)

意味・・しみじみと見入っていると、さまざまな物思い
    をさせる月に加えて、さらにまた、一人住まい
    の私の身だけに吹いて、物思いをいっそう深く
    させる松風だ。

    山の庵に一人住む身のものとして詠んだ歌です。
    次の本歌を念頭に詠んでいます。

   「月見れば千々にものこそ悲しけれ我が身ひとつの
    秋にはあらねど」  (意味は下記参照)

 注・・ながむれば=ぼんやりと思いふけると、しみじみ
     と見入っていると。
    千々に=さまざまに。
    わが身ひとつの=私の身にだけ吹いて、物思いを
     いっそう深くさせる、の意。

作者・・鴨長明=~1216。62歳。従五位。1204年出家する。
     「方丈記」の作者。

本歌です。

月見れば 千々にものこそ 悲しけれ わが身一つの
秋にはあらねど
             大江千里(おおえのちさと)
              (古今集・193、百人一首・23)

(つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみ
 ひとつの あきにはあらねど) 

意味・・月を見ると、私の想いは、あれこれと限りなく物悲
    しくなる。私一人だけの秋ではないのだけれど。
    
    秋の月を見て悲しく感じるのは、誰でも同じであろ
    うけれども、自分だけがその悲しみを味わっている
    ように思われる。

注・・ちぢに=千々に、さまざまに、際限なくの意。
    もの=自分を取りまいているさまざまな物事。

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