千子


秋の夜に寝ならぶ旅のやどり哉  千子(ちね・去来の妹)

季題・秋の夜(あきのよ)

萩の風なにか急(せ)かるゝ何ならむ  水原 秋桜子



行く末の 月をば知らず 過ぎ来つる 秋またかかる 
影はなかりき            
西行

(ゆくすえの つきおばしらず すぎきつる あきまた
 かかる かげはなかりき)

意味・・これから先、どんな明月とめぐり合うかどうかは
    分からない。過ぎ去った秋を振り返ってみても、
    このような美しい月をまたと見ることがなかった。

    今夜の月は一期一会と、明月の名月たらんとする
    事を、只今現在を存分に観賞しょう、という気持
    で詠んだ歌です。    

 注・・一期一会=一生一度きりの出会いのことで、人と
     の出会いは大切にすべきという戒め。もともと
     は、茶道の心得の言葉(今日という日、そして
     今いる時というものは二度と再び訪れるもので
     はない。そのことを肝に銘じて茶会を行うべき
     だ)。

作者・・西行=1118~1190。

出典・・山家集・356.




函館の 青柳町こそ かなしけれ 友の恋歌
矢ぐるまの花    
                石川啄木

(はこだての あおやなぎまちこそ かなしけれ ともの
 こいうた やぐるまのはな)

意味・・函館の青柳町時代はとりわけ懐かしい。友の
    恋歌をきいて楽しんだあの頃の生活よ。家の
    周囲に咲きにおう矢車の花の思い出よ。    

 注・・かなし=愛し。いとしい、身にしみて思う。

作者・・石川啄木=1886~1912。享年27歳。歌集
    に「一握の砂」、「悲しき玩具」など。

出典・・一握の砂。

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